2021年10月25日月曜日

Receiver 1.4:超再生(新形式の回路)

超再生回路を定量的に考察してみました(その4)

■概要
TRを2SC5066に変えたところ、感度が10dBほどアップしました。
超再生RXでもfTが高くNFが低いTRの方が性能が良いということでしょうか?
はっきりした理由はわかりません。

■Simulation
前回と同じ回路です。2SC5064と2SC5066とはパッケージ違いです。
Vcc=2.5V、C7=2.2nFでSimulationしたところ、-6dBの感度(最大感度)はなんと-130dBmとなりました。
熱雑音を考慮していないためですが、それにしても驚きです。

■実機の評価
Vcc=3V、C7=4.7nFとして評価しました。
2SC1815と同じ傾向ですが、S/N10dB感度は-105dBm近辺と10dBほど感度アップしています。
1kHz出力の落ちはじめも約-100dBmで、Simulationと一致しています。
また6dB帯域幅は2SC1815と同じ±0.3MHzでした。
C7とクエンチング周波数・出力レベルの関係をあらためて測定しました。
クエンチング周波数がC7と反比例の関係にあることは想定通りで、一方出力レベルはほとんど変わらないことを確認しました。
C=1.8nFのとき、弱電界で動作不安定になりました。パスコンとクエンチング周波数調整が兼用になってるのが原因かと思い、エミッタ側CR方式に変えてみましたが、傾向は同じでした。
一般に発振回路が発振するにはある程度の時間が必要です。またQが高いほど発振開始までの時間が長くなります。例えばXtalではmsecオーダーの時間がかかります。多分、クエンチング周波数が160kHzにもなると発振が間に合わなくなると思われます。中電界以上で動作し始めるのは、RF入力があると発振開始時間が早くなるためと考えられます。

■まとめ
新形式の超再生RXは感度・選択度・再現性の点で従来型のColpitts方式に比べて優れているように思えます。
可能性は秘めていますが、まだ解析の余地がありますので、引き続き検討します。


2021年10月24日日曜日

Receiver 1.3:超再生(新形式の回路)

超再生回路を定量的に考察してみました(その3)

■概要
新形式の超再生回路の提案です。
部品点数が少なく、高感度で再現性の良い回路です。

■原理
超再生回路の原理は、クエンチング(間欠)発振している回路にRF信号を印加すると、その振幅に応じてクエンチングの幅や周期が変化するので、それを平滑してAM復調するというものです。
発振回路はなんでも良く、一般的にはColpittsが使われますが、Colpittsの難点は調整を要する箇所が多いので、最適な動作点を求めるのが結構大変な点です。
部品点数の少なければ、調整ポイントも少ないので、その分検討が楽になります。

■新形式の回路
VCO技術の発展の歴史の「モノリシックVCO」に記載された差動正帰還形発振回路を参考にしました。
基本形は差動ですが、それをシングルエンドに変換することができます。
クエンチング発振をさせるには、他励式という選択肢もありますが、他の回路と同様エミッタにLとCR回路を挿入するだけでクエンチング発振します。
発振周波数はRCの時定数で決まります。
下記が実際の回路です。CR回路はコレクタ側に挿入しても、全く同じ結果になります。
この回路の良いところは部品点数が少ないことと、安定性というか再現性が極めて高いことです。
■Simulation
とりあえずコレクタ側にCRを入れる回路でSimulationしてみました。
上図のTRは2SC5064ですが2SC1815に変えて、Rは発振が持続できる範囲でできるだけ大きく、またCでクエンチング発振の周期を決めます。
最終的にはR52=22kΩ、C7=10nFとしました。L6は最適値の幅が広く、100uHでもOKですが10uHとしました。なおVccは2.5Vです。
Simulationではノイズが定義できず、検波出力からは感度が判断できません。
また6dB帯域幅は約±1MHzとなり、ColpittsのSimulation値の約半分でした。

■実機の評価
実際に組んでみました。
S/N10dBの感度は約-95dBmとラジコン基板より10dBほど良くなっています。
AGC特性はラジコン基板より劣りますが、-20dBmの強電界でも破綻しませんでした。
また6dB帯域幅は約±0.3MHzと特筆すべき狭さでした。
なおエミッタ側にCRを入れる回路でも同じ結果が得られたことを付記しておきます。

■まとめ
新形式の回路がSimulation・実機とも十分働くことがわかりました。
感度はラジコン基板より良く、帯域も狭くいい感じですが、その理由は明確ではありません。ラジコン基板も調整すればもっと良くなるかもしれず、今後の検討課題です。
TRを2SC5066に変えると感度がアップする兆しが見えましたので、次回報告します。



Receiver 3.4:Dual PLL Synchronous Direct Conversion FM Radio

2重PLL同期検波によるDirect Conversion FMラジオ-2 ■概要 Receiver 3.1で、Xtal発振を参照して自励発振のVCOを制御するの第1のPLLループと、そのXtalによるVCXOの発振周波数を制御する第2のPLLループを持つ2重PLL回路が、ループ...