2022年11月30日水曜日

Receiver 3.2:PLL Synchronous Direct Conversion FM Radio(修正版)

 PLL同期検波によるDirect Conversion FMラジオ-1(修正版)

■概要
Dual PLL同期検波の前に、普通のPLL同期検波(Single PLL)によるDirect Conversion FM RXがどれくらいの感度になるかをSimulationします。
RXの実際の構成としてPhase Detector(Mixer)はSA612A(Gconv=17dB@45MHz)、VCO は「正帰還形GHz VCO」で報告した正帰還形の自励発振回路、Loop Filter+AmpはRail to RailのNJM77701を予定しているので、それを参考にSimulationの回路を定義します。

■回路
Simulationの回路として、Phase Detector(Mixer)はSA612AのMixer部分の回路を引用、VCOとOP Ampは機能を定義した理想素子を使います。
OP AmpのDC Gainは大きいほど良いのですが、大きすぎても不安定になりますので経験値から約50dBとし、ループフィルターは100KHzで約30dBとしました。
DCバランスをとるために、OP Ampの+入力-Gnd間に帰還抵抗と同じ値の抵抗を挿入します。

RF入力は400MHz、VCOをΔF=100kHz離調して、PLLのキャプチャー限界のRF入力を求めます。VCOのKファクターはKF=1MHz or 100kHz/Vの2通りです。
ループフィルターのF特を下記に示します。


■Simulation
KF=1MHz/Vの時、キャプチャー下限のRF入力は約-75dBmで、下図は引き込み過程です。
KF=100kHz/Vの時のキャプチャー下限のRF入力は約-55dBmでした。引き込み過程は割愛します。
KFが10倍だと、キャプチャー下限は20dB下がることがわかります。
いったん引き込めばFM復調しますので、感度はキャプチャー下限のRF入力レベルとなりますす。ただし、この時のS/N比はわかりません。

■結果の考察
上記の回路でも約-75dBmの感度が期待できることがわかりました。
LNAを前置すれば、計算上は少なくとも-90dBmの感度ということになりますが、実際にはVCOの出力がアンテナに飛び込むのでしっかりシールドする必要があります。

次回はPCBに実装してどうなったかを報告したいと思います。





2022年7月3日日曜日

Oscillator 1.2:広帯域VCO

 正帰還形GHz VCO(その2)


■ 概要
(その1)の課題は発振出力レベルでした。
(その2)では発振振幅が2Vbeとなるような変更をして、出力レベルの当初目標をクリアしたいと思います。

■ 目標仕様
最大発振周波数:2GHz
出力レベル:0dBm

■ 回路図
(その1)との違いは正帰還のループの一方を変更し、エミフォロを介したことです。
他の一方もエミフォロを介しても良いのですが、DCレベルを合わせるだけなのでDiodeを挿入します。
理想的には発振振幅が1Vbe x2=1.3V(p-p)の矩形波から2Vbe x2=2.6V(p-p)の矩形波になり、振幅は2倍になるはずです。Simulationで確認します。
エミフォロ出力で振幅を測定すると負荷の影響を受けるので、負荷の影響をなくして振幅を見ると、(その1)の回路では1.9V(p-p)、(その2)の回路では3.0V(p-p)になりました。
共振回路があるので振幅が増えています。同じ比率で増えていない理由がわかりませんが、とりあえず無負荷という条件であれば、振幅は1.6倍(+2dB)増えそうです。

■ (その1)の結果検証
(その1)の発振出力レベルについて、Simulationと実基板の結果をあらためて検証します。
寄生L=3nHとして、L=6.8nHのときのFoscを比較すると、下記のようにほぼ一致します。実基板と一致するように寄生L=3nHとしたのですから当然ですが。
一方、Voutは実基板ではSimulation比4dBm以上の差があります。
この差はユニバーサル基板で組んだので、チップ部品を使っていてもGNDが不完全だったり配線が長かったりしたのが主な原因と思われますが、それにしても差が大きいです。
この結果から、(その2)ではきちんと両面基板を使うことにしました。

■ PCB
見にくいですが、カッター切り取り方式です。
紫線で囲まれた領域を残すように紫線に沿って切れ目を入れていきます。
Q8のみ裏面に実装し、スルーホール代わりにスズメッキ線で部品面と裏面を接続します。

■ Simulation
(その1)では寄生L=3nHと定義しましたが、(その2)ではRSの技術情報を参考にして、寄生L=3nH、両面基板の裏・表のパターン間容量0.5pF+1608の6.8nHの容量を0.5pFと見込んで寄生C=1pFとした方が実基板に近いことがわかりました。

下表はその条件での計算結果です。

Foscは1Vbeと比較して約1.2倍になっています。その理由はQ8のベースが共振回路に直接接続されていないので、Q8の拡散容量分がなくなったためです。
その分、周波数の可変幅は減ってはいますが、2.3倍から1.8倍とそれほどではありません。
裏・表のパターン間容量を減らせば、Foscの上限はアップすると思います。
一方Voutで特徴的なことは、2Vbeの方はIeによるレベル変動がほとんどないことです。
アップ量は、Ie=10mAで1.6dBと当初見込みに近い値です。

■ 実基板の評価
冒頭のフォトが実基板です。手製ですから、出来映えはよくありません。
FoscはSimulationと同じような結果になっています。
Voutは期待通りとはいかない結果でした。
出力は1Vbeのときより改善し、ほぼ0dBm以上となりましたが、Ieが小さい領域と大きな領域で減少しています。

Foscについて、測定値がスペアナ・プリスケーラ・カウンターの3種で微妙に異なりました。
各測定とも入力抵抗は50Ωで、基板とはSMAのP-Pを使い最短距離で接続しています。
エミフォロが原因かと思い、安定度を上げる目的でR10を47Ωにしても、本質的な変化はありません。
Simulationで、出力端子に2pF程度の容量をつけると30MHzくらい周波数が下がるので、それが主たる原因かと思いますが、まだ釈然としないところがあります。
Voutは、Ie=10mAで低下している原因がわかりません。
fT vs Ie特性はIe=15mAで最大なので、2SC5064の問題ではなく回路に問題がありそうですが、Simulationでは大丈夫なのが奇妙です。

■ 回路定数の修正
L3を1.8nHにして検証しました。
Simulationでは寄生C=1p、寄生L=3nHとしました。
Foscは高い周波数で差がありますが、他のノードにも寄生Cを追加すると一致するようになりました。(図はありません)

VoutはR11を3.3kΩに変更すると、Ie=10mAでも低下しませんでした。図はありませんが、L=6.8nHでも改善しました。差動電圧のバランスが改善されたためだと思います。なぜSimulationではオッケーなのでしょうか?
ただし、まだ周波数が高い領域で差が出ています。
Foscと異なり、他のノードに寄生Cを追加したりL3のQを下げてSimulationしても、出力は1dB程度しか下がらず、実基板との差は縮まりませんでした。
基板材質やパターンに問題があるかもしれません。




2022年5月22日日曜日

Receiver 3.1:Dual PLL Synchronous Direct Conversion FM Radio

2重PLL同期検波によるDirect Conversion FMラジオ-1

■概要
「Analog TV Tuner/VIFで作るAir Band RX」で、Super HeterodyneとPLL同期検波の組み合わせによるAM RXを報告しましたが、今回はFM Rxを検討報告をします。
折角ですからHeterodyneではなくDirect Conversionにしたいと思います。

■原理
PLL同期検波によるAM復調は90°移相回路が必要なのに対して、FM復調の場合はVCOの制御電圧がそのままFM復調電圧になるので、回路がシンプルというメリットがあります。

東芝レビューに復調原理の説明があります。
この中の「2.2 直接引き込み型受信機」(図4)が基本回路です。
文中にもあるように、VCOの発振周波数内に強力な信号があった場合それを引き込んでしまう欠点があり、これは「Analog TV Tuner/VIFで作るAir Band RX」でも同じで、受信周波数がどんどん移動してしまうという習性があります。
またVCOが自励発振なので周波数の安定度も問題になります。

この欠点を解決するのが「3 デジタルPLL再生型無線受信機」(図5)の2重PLL回路です。
この回路ではデジタルループのFrequency Synthesizerで受信周波数が決まりますから、アナログループによるVCOの可変範囲が適正であれば隣接チャンネルを引き込むことはありません。
またFSK復調信号はデジタルループの制御電圧から得ています。
ただこの回路はVCOが一つでかつPLLがアナログとデジタルで構成されていて、回路の詳細が良くわかりません。

そこでアナログPLLを使った2重PLL回路を考えました。
すなわちXtal発振のFrequency SynthesizerでVCOを制御して受信周波数を設定する第1のループと、そのXtal発振周波数を変化させる第2のループでFM復調する2重のループを持つPLL回路です。
良いアイデアだと思って特許検索したら、特許2859037「2重PLL回路」特開昭63-31314「位相同期回路」が見つかりました。ほかにも似たような出願もあり、同様のアイデアが30年くらい前に出願されていることがわかりました。
出願の主旨は、自励発振回路の安定度が劣っていても、あるいは入力信号が一時的に切れても、安定して入力信号を引き込むことができるというもので、私の狙いと同じです。
諸先輩に敬服です。

■原理回路
上記の特許には「2重PLLはループフィルタの構成によっては不安定」との記載があるので、まずはどのような条件で2重PLL回路が成り立つのか下記の原理回路でSimulationしてみます。
この原理回路は上記特許の[図4]従来回路と同じで、「安定動作は期待できない」と記載されています。
回路の上半分は水晶発振のPLL回路、下半分は自励発振のPLL回路です。
ループフィルターはともに同じ定数で、CRの値はテキトーです。
入力信号はt=0~20usecのとき無信号、t=20~60usecのとき4.1MHz、t=60~1000usecのとき3.9MHzと切り替えます。FSKですね。
各VCOの発振周波数を水晶発振はFSKの中心周波数の4.0MHz、自励発振は多少ずれた想定で4.5MHzとします。
また上記の特許の[請求項1]に倣って各VCOの周波数感度を水晶発振<自励発振とし、水晶発振は1MHz/V、自励発振は10MHz/Vとします。
この状態でSimulationすると、下記のようにうまく動作して、4±0.1MHzのFSKが復調されました。
そこで今度は水晶発振の周波数感度を自励発振と同じ10MHz/Vにすると、下記のようにうまく動作しません。
このSimulationから、[図4]従来回路でも周波数感度を水晶発振<自励発振とすれば、[請求項1]に記載されているように水晶発振のループフィルタの出力を自励発振のループフィルタに加算しなくても安定動作することがわかりました。
この原理回路では2つのループフィルタの応答特性が同じですが、2つのループフィルタの応答特性に差をつけても、自励発振の周波数感度が水晶発振の10倍もあれば問題なく動作しました。

一般に水晶発振の周波数可変範囲は数10ppmなので、自励発振より大幅に小さく、周波数感度は自動的に水晶発振≪自励発振となります。
したがって[請求項1]に記載されているように2つのループフィルタの出力を加算処理しなくても安定動作することが期待されます。





2022年3月3日木曜日

Receiver 2.1:PLL同期検波VIF ICを使ったAir Band RX

AnalogTV Tuner/VIFで作るAir Band RX

■概要
超再生Air Band Rxは確かに聞こえはしましたが、選択度とS/Nで不満が残りました。
そこで、もう少しまともな?Rxを、と企画しました。
使用するAnalog TV Tuner/VIFはUS Band(48~890MHz)で、その昔、秋月電子で買ったものです。
PICマイコンでFrequency SynthesizerのDataを送信し、受信周波数をLED表示します。
受信モードはAMで、PLL同期検波の映像出力から復調出力を得ます。
PLLループからFM復調出力を得ることもできますが、PLLのCapture Rangeが広いので、Narrow Band FMの場合S/Nが十分とは言えず、AM専用のAir Band Rxと割り切りました。

■仕様
1.ロータリースイッチにより、1MHzステップで受信周波数を合わせます。
2.周波数は4桁のLEDで表示され、たとえば120.8MHzを聞きたければ「120.0」に設定します。
2.Capture Rangeは受信レベルによりますが最大±1.5MHzあるので、電波があれば、設定周波数が120MHzでも120.8MHzを引き込み、AM復調されます。
3.この時125kHzステップでさらに微調して、AFT(Automatic Fine Tuning)出力がセンター電圧(Just Tune)になるまで自動調整します。
4.微調のSynthesizer Dataから、最終的に「120.8」とLEDに周波数を表示します。
5.いったん引き込めば、PLLの特性で隣接する電波の影響は受けません。
6.逆に一番強い電波を引き込むので、その電波がある限り隣接する弱い電波は受信できないことになります。
7.120.8MHzの電波が切れると、±1.5MH以内に別の電波あれば、その中で最強の電波を引き込み、例えば「119.5」と周波数表示します。
8.すなわち、設定周波数の±1.5MHz以内にある一番強い電波を自動的に追従するということになります。

■LM7578N
このTuner/VIFのVIF部に使われているSharp製のICは、PLL同期検波で映像出力を得ます。
アナログテレビ時代の最後を飾るRF技術と言えるでしょう。
USA Bandなので中間周波周波数は45.75MHzですが、今回は残留側帯波ではなく通常のAMですから中間周波数はSAWF中心周波数の44.0MHzに変更します。
Band幅は±2MHzほどあって広すぎますが、PLL同期検波の特性を利用してそれを逆手に取る作戦です。
仕様で述べたように元々のCapture Rangeはデフォルトで±1.5MHzあります。ある程度完成したところで実際に受信すると、±1.5MHzもあると追従範囲が広すぎて実用的ではありませんでした。
VCOの容量は上記回路のように24pFですが、これを増やしてHigh C・Low LにしてCapture Rangeを下げました。
容量を76pFにして様子を見たところ、大丈夫そうでした。
なお、SIF部はインターキャリアではありませんので使えません。

■回路

(1)Frequency Synthesizer部
PIC P16F84AでTunerの受信周波数を制御します。
ロータリースイッチの回転で割り込みをかけ、右回転で1MHzステップでUPし、左回転でDOWNします。
AFT出力を常時見ていて、変化があると周波数設定のMSレジスタを書き変え、125kHzステップでUP/DOWNします。
MSレジスタの内容から受信BANDを判定して表示します。
またその命令を3線でTunerに送ると同時に、1線調歩同期でLED表示のP16F84Aに送ります。
(2)LED表示部
PIC P16F84Aで調歩同期によってMSレジスタの信号を受け、受信周波数を4桁LEDに表示します。
TunerはUpperヘテロダインです。MSレジスタはLocal発振周波数を表しているので、受信周波数はそこから440を引きます(IF周波数は44MHzなので)。
その値をBCDに変換し、さらに7 Segに変換します。
(3)Vari Cap電圧部
LMC555で200KHzの発振をさせ、倍電圧整流で24Vを得ています。
Band 4をカバーするには30V欲しいのですが、24Vでもなんとかなります。
(4)AF Amp部
Fc=3KHzのLPF通過後、TDA7266でスピーカーをドライブします。
(5)AFT UP/DOWN部
AFT出力は-0.1V/100kHzですので、UPのVthをセンター電圧+0.5V、DOWNのVthを-0.5Vに設定します。
(6)電波強度の表示部
AGC電圧を反転して、LM3914を使い10個のLEDにバー表示します。
AGC電圧は-50dBmで飽和してしまいますが、これで良しとします。

■感度測定


実用感度は-100dBm程度です。
なお、常時AFTを動作させると、受信周波数がどんどんずれてしまうことがありましたので、一度受信周波数を決まると一定時間後はAFTをDefeatする機能を追加しました。













2022年1月30日日曜日

Receiver 1.5:超再生(Air Band)

 超再生回路を定量的に考察してみました(その5)

                   LNA           超再生回路   AF Amp
■概要
新形式の回路でAir Band RXを作りました。
超再生RXは基本的にはAM受信機です。
応用例は?と考えると、今やAMで通信をしているのは一部のアマチュア無線かAir Bandくらい。そのほかOOKの応用でとしてラジコンやキーレスエントリーなどが思い浮かびます。
ということでAir Band RXを作ることになりました。

■目標規格
受信周波数:118~128MHz
感度@120MHz (S/N20dB@1kHz 60%AM):-110dBm(LNAアリ)
6dB帯域幅(S=-6dB@1kHz 60%AM):±500kHz
最大許容入力@90MHz/120MHz(S=+6dB@1kHz 60%AM):-30dBm(LNAアリ)

■基本回路
回路の感度・選択度・AGCレンジなどを決める要素はたくさんはあります。
27MHzの経験から、C1=5pF・C2=22pF・L1=47nH・L2=22uH・R2=22kΩ・C4=4.7nFとして、VE点における検波出力レベルのSimulationをしました。 
C3は後述しますがL2の等価並列容量で、自己共振周波数から逆算しました。C3の影響は無視できません。

Simulationと実機の結果は下記のようになりました。
Simulationでは-120dBm以下も出力が一定になっていますが、その現象は(その4)の検討でも同じです。熱雑音が考慮されていないためですが、なかなかうまく熱雑音を定義することができません。
また-50dBm以上の強電界では、Simulationでも実機でも出力が急激に増加しています。これはクエンチング発振と包絡線検波が混在しているためです。下記のSimulationはRF入力が-30dBmのときの波形です。RF入力が大きいとクエンチング発振が停止していることがわかります。
検波出力が-6dBになるポイントを-6dB感度、+6dBになるポイントを最大許容入力と定義します。大雑把にいえば、-6dB感度は-100dBm、最大許容入力は-40~-30dBm(AGCレンジ50~60dB)という結果になりました。

この基本回路の受信周波数は120MHz付近でしたので、この状態で50MHzのループアンテナをつないでAir Bandを受信してみました。120.5MHzの Tokyo Controlと上空の旅客機との交信が受信できます。
気をよくしてLNA(BGA420:Gp=19dB/NF=2dB)を接続したところ、FM放送のバリバリという妨害を受け受信不能になりました。単に選択度の不足だけではなく、AGCレンジがオーバーしているためのようです。

改めてAir Band周辺の電波状況を測定したところ、LNAを接続した状態でFM放送(80MHz帯と90MHz帯) が-30dBm、デジタル警察無線(150MHz帯) が-30dBmであることがわかりました。
最大許容入力の周波数特性を測定すると、90MHzにおいて-16dBm(LNAナシ)でしたので、LNAアリで-35dBmと計算され、受信結果と一致しました。
この結果を受けて、最大許容入力の規格を追加しました。

■各素子の最適化
検討早々、基本回路の定数では不十分であることがわかりましたので、各素子の値を検証します。
(1)C1・C2・L1
C2・L1は発振周波数帯における常識的な値に決めますが、アンテナとの結合度を決めるC1は悩みます。FM妨害を避けるためには5pFでは大きいことがわかりましたので、C1を小さくして負荷Qを上げてみます。
C1を2pF、1pFと下げると最大許容入力は改善しました。
帯域幅も5pFで±700kHzが1pFで±500kHzと改善しますが、感度低下の方が気になります。
LNAを前置すると、感度はある程度カバーできるはずです。
5pFと1pFの感度差をNFの差とみなすと11dBありますが、LNAのGainは19dBあるので計算上は全体のNFにはほとんど影響しません。実測してみるとその通りになりました。
最終的にC1=1pF・C2=22pF・L1=47nHにしました。

(2)R2・C4
クエンチング周波数はR2・C7の時定数で決まり、一般に100kHz程度に設定します。
R2=22kΩ・C4=4.7nFのとき、クエンチング周波数は約82KHzでした。
クエンチング周波数を変えても出力レベルは変わらないことは(その4)で報告しました。

TrのIeはR2でT決まります。Ieが少ないほど感度はアップする傾向にありますが、少なすぎても発振停止など不安定になります。基本回路では33kΩで発振停止しました。
基本回路でR2xC4の時定数を同じにして、R2が22kΩ・10kΩ・4.7kΩの時の感度を測定しました。
AGC特性・S/N比・最大許容入力に大きな差が出る一方、感度の差は若干でした。
総合的に見てR2=22kΩ・C4=4.7nFにしました。

(4)L2
L2は一般には数10uHですが、最適値が良くわからないので実測しました。
検波出力はL値で変わりますが、感度はほとんど変化しませんでした。
Simulationでは、L2が大きいと発振期間が長くなるのがわかります。上が10uH、下が47uHの場合です。
発振期間が長くなると検波出力が増加するのは順当のような気はしますが、100uHで減少するのは等価並列容量が影響しているせいでしょうか。

なお、この結果を見て驚くのは発振強度がかなり大きいことです。L2=10uHのときOSC点の発振強度は250mVp-p=-8dBmと計算されます。LNAの前置はmustですね。
また発振時のIe(peak)は2本分で8mA以上と非発振時0.2mAの40倍になっています。
最終的にL2=22uHにしました。

■全回路図
正帰還形発振回路はIc(Ie)で周波数が変わることは「正帰還形GHz VCO(その1)」で報告しましたが、超再生動作ではIeを大きく変えることができないのと、非発振時のIeが小さいのでIeを変えても周波数はほとんど変化しません。そこで、バリキャップで受信周波数を変えることにします。
Ieは発振時と非発振時の比が40倍ほどあります。当初5Vラインのインピーダンスが高かったので、その影響が出て動作が不安定になったので、5Vラインのパスコンを強化しました。
■PCB
2.54mmピッチのユニバーサル基板に配置しました。
LNAとAF Ampは別基板です。

■評価
(1)受信周波数:118~122MHz
1SV280の容量範囲が2.5~5.5pFと少なかったので10MHzの範囲をカバーできませんでした。
(2)-6dB感度(0dB@-70dBm):-108dBm(LNAアリ)
(3)S/N20dB感度:-94dBm(LNAアリ)
S/N=20dBで-110dBmというのは高望みかもしれません。
(4)受信テスト
50MHzループアンテナで受信すると、FM妨害から完全に逃れるのは無理でした。
AGCレンジ内ではあるのですが、そのそも1信号選択度が不足しています。
120MHz λ/2のダイポールアンテナに変えると、FM妨害がほとんどなくなり、Tokyo Controlとの交信を快適に?受信できるようになりました。












Receiver 3.4:Dual PLL Synchronous Direct Conversion FM Radio

2重PLL同期検波によるDirect Conversion FMラジオ-2 ■概要 Receiver 3.1で、Xtal発振を参照して自励発振のVCOを制御するの第1のPLLループと、そのXtalによるVCXOの発振周波数を制御する第2のPLLループを持つ2重PLL回路が、ループ...