2021年9月21日火曜日

Receiver 1.2:超再生(Simulation)

 超再生回路を定量的に考察してみました(その2)

■概要(2023年9月改訂)
(その1)でラジコン基板の実測をして、超再生RXの良さを実感しました。
今やSimulationで回路設計することは常識、というかSimulationでしか設計できない時代になりました。果たしてSimulationでそれを再現できるか、(その2)で考察したいと思います。

■回路
ラジコン基板と同一の回路ではうまく動作させることができず、試行錯誤して下のような回路に落ち着きました。
また変調周波数は素数が無難と考え7kHzとしました。
クエンチング周波数はその2倍以上にしなければなりません。クエンチング周波数を決定する要素としてはC17/R14が支配的ですが、C15/R13とC16/R12も影響します。
様々な要素がかみ合って、結局下のような定数に落ち着き、クエンチング周波数は20kHzになりました。
Trは27MHzですので2SC1815でオッケーでした。
■Simulation
AMの変調度100%、周波数27MHzのときの各部の波形です。
Transient解析する訳ですが、LPFを介してVdetに含まれる7kHzを抽出してもいいのですが、FFT解析で7kHzを抽出すると解析時間が短いことがわかりました。解析時間を1msecとすると周波数の分解能は1kHzですが、問題ないようです。
RF入力レベルを変えた時のVdet(7kHz)のレベルをもって感度の代用とします。
若干暴れている理由、またS/N比も不明ですが、-90dBmから急激に7kHzのレベルが下がっているので、-90dBmくらいの感度と考えられます。
実際の基板とよく似た結果になったといえます。
帯域幅もSimulationしましたが、十分広いという以上のことはわかりません。参考程度ですね。
ちなみに発振中心周波数は26MHzで、なぜ受信中心周波数とズレがあるのか謎です。

■結論
今回の手法で実際の基板に近い結果が再現されたので、このSimulation法で基礎検討ができそうです。
新しく提案する超再生回路で検討を続けたいと思います。




2021年9月20日月曜日

Receiver 1.1:超再生(おもちゃのラジコン)

 超再生回路を定量的に考察してみました(その1)

■概要(2023年8月改訂)
今からちょうど100年前Edwin Armstrongが発明した超再生回路はシンプルながら高感度のRXとして良く知られています。
ただ何dBuVあるいは何dBmくらいの感度なのか、どの程度のS/N比なのか、受信帯域はどれくらいかといった定量的なデータは検索しても見あたりません。
孫のラジコンの超再生基板があったので実測してみたところ、なんと予想以上の性能で驚きました。

■ラジコンの超再生基板
基板には超再生回路とDecoder/Motor DriverのICが配置されています。
左下が超再生の回路ですが、1608の抵抗値だけは読めますが、L/C/Trについては詳細がわかりません。検索すると「MS工房 秋葉(新津)のブログ」に似た回路がありました。
■性能評価
F=26.8MHz・1kHz/60%AM信号を入力し、AF OutのS/NをAF dB Meterで測定します。
S/N比10dBの感度は-84dBmです。聴感では-90dBmまで了解できます。
LNA(GN1021:Gp=18dB実測 @30MHz/NF=2dB仕様書 @300MHz)を前置すると、さらに感度が上がり-96dBm。ちなみにICOMのIP57のAM S/N 10dB感度が7dBµ(-100dBm)ですから、感度だけは大したものです。
感度もさることながら、驚いたのはAGCが働いていると思わせるほどAF出力が一定であったことです。
検波がPWM(Pulse Width Modulation)として動作しているためと考えられますが、それにしても50dB以上のAGC Rangeがあるとは驚きです。
この辺はWWikipedia再生回路に記述があります。
それによると、超再生検波の動作にはリニアモードとログモードがあり、リニアモードはPAM、ログモードはPWMで動作している、とあります。
特にログモードはAGCの機能があるともあり、あらためてそれを実感しました。
選択度は良いというコメントも見受けられますが、Wikipediaでは良くないとあります。
S/N比20dBの6dB帯域幅を実測すると、中心周波数の7%と決して良くはありませんでした。本当は2信号選択度で評価すべきなんでしょうが、別の機会に譲ります。
また、復調帯域は約5kHzでした。

■感度の計算式
一般にAMの感度は、S=kT+BW+NF+S/Nと表されます。
27℃のkT=-174dBm、BWはIFとAFを合算して決まる帯域ですが、上の図から10kHzと仮定するとBW=30dBになります。
S/N=10dBなので、-84=-174+30+NF+10、したがってNF=50dBと計算されます。すなわち大雑把に言えば、S/N 10dB感度-84dBmということはNF=50dBに相当するということです。
ここにLNAのGN1021(Gp=18dB @30MHz/NF=2dB @300MHz)を前置すると、そのときのNFは2+50-18=34dB と計算され、NF改善度は50-34=16dB、すなわちLNA前置時は-84-16=-100dBmということになり、NFがもう少し悪ければ実測値とほぼ一致します。

(その2)では、Simulationでは一体どのような結果になるかを考察してみます。


2021年9月19日日曜日

Measuring Instrument 2:AF dB Meter

TL074Lを使ったAF dB Meter

■概要
AudioのS/N比の測定は帯域約3kHzのTrue RMS機能がついたDVMで行っています。ただし、その値をいちいちdBに変換するのは結構面倒です。また表示される値が変動して読みにくいので、AF dB Meterなるものを製作しました。
AD8307ANZなどのLog Ampを使えば簡単ですが、あえてDiscreteで組みました。といってもOPアンプTL074Lを使ったRSSI方式です。
目標規格は、入力レベル-80dBV~0dBV・F特20Hz~20kHzです。

■基本回路とSimulation
回路はGv=10dBのアンプを7段つなげ、各段の出力をピーク検波して、検波電流をカレントミラーで加算する方式です。OPアンプは当初LM324でしたが、スルーレートが悪いのでTL074Lに変更しました。
Simulatorにノード数制限があり7段のOPアンプが定義できないため、仕方なく10dBの理想アンプにダイオードのリミッタを組み合わせてOPアンプの代わりとしました。
DC直結なので、Transient解析ではなくDC解析でSimulationしました。
その結果です。-60dB≒1mVdc≒-63dBVまで直線性を保っています。
■回路図(2022/06/19更新)


当初案から変更したのは以下のとおりです。
(1)TL074L直結ではDCオフセットが無視できなかったので、IC間はAC結合にしました。
(2)初段の入力抵抗は100kΩでしたが、安定度に難があり10kΩに変更しました。
(3)-5Vは当初TL7660でしたが、発振周波数10kHzが影響する恐れがありMAU106にした。±5Vの入力変動があり改善が必要です。
(4)カレントミラーは温特を考慮してDual Trにしました。

MAU10が壊れてしまいましたので、-5V生成をNJM2360に変更し、温特などの改善を行いました。

■PCB

■性能評価(2022/06/19更新)
校正が微妙です。0dBV入力にしてVR1で0dBV表示に調整、-60dBV入力にしてVR2で-60dBV表示に調整します。
直線範囲は-70dBV~0dBV、F特は40Hz~20kHz以上(50kHz程度)でした。
電源電圧の5Vに敏感です。
Simpleが信条にもかかわらず部品点数が多くなってしまいました。
もう少し温特の改善が必要です。
AD8307ANZを使ったらもっと楽でしたね。AD8307ANZへ


2021年9月18日土曜日

Measuring Instrument 1:Micro C Meter

1pF以下も測定可能なMicro C Meter

■コンセプト
今は4万円も出せば波形は勿論のこと電圧計・カウンター・スペアナ機能がついたデジタルオシロが買えます。あとデジタルテスター(DVM)があればとりあえずの回路検討には事足ります。
それでダメなときは測定器を自作してしまおうというのがコンセプトです。

■概要
容量測定はある程度の容量ならテスターでできますが、私のテスターでは100pF以下は誤差が大きく、10pF以下になると計測してくれません。
1pF以下も精度よく測定できる、簡素な回路ながら再現性が高い微小容量計を作りました。
1608の0.5pFを計測

微小容量計は30年以上前に売っていた秋月電子のキットがあります。当時の微小容量計の記事へ
当時とは部品の事情も大きく変わっているので、少ない部品で1pF以下も精度よく計測できるようにします。

■測定原理
原理は「微小容量計キット」と同じで、微分回路の応用です。微分回路の入出力電圧の関係は、
Vo=Vi/(1+1/jωCR)と表されます。
|jωCR|≪1なら、Vo=Vi*jωCRとなり、
jω=d/dtなので、Vo=CR*dVi/dtとなります。
すなわち時定数CRが十分小さければ、出力Voは入力Viの立ち上がり・立下りの傾きに応じた振幅になり、その値は時定数CRに比例します。
したがってVoをピーク検波すれば、Cの容量に応じた電圧を得ることができます。

■部品の選定
寄生容量や寄生インダクタンスを最小にするために、クリティカルな部分はSMD(表面実装部品)を使用します。主要部品は、秋月電子の発振モジュールLTC1799だけです。LTC1799
勿論CMOS Logicの74HC14あるいは74HC04で方形波を作ってもOKです。
ほかにDVMが必要です。私の場合は手元にあったLCD DVM AE-7136/3を使いました。

■基本回路
微小容量計キットとほぼ同じ回路ですが、ショットキーバリアダイオード(SBD)が1つになっています。SimulationではVdetはSBDが1つと2つでも大差ありませんが、抵抗の方がVoの波形がきれいに見えたからです。
微分回路のRに相当する抵抗はダイオード検波の入力インピーダンスになり、R2の約半分になります。
ViはLTC1799 で、立ち上がり時間Trは仕様書によれば17ns(typ)ですが、実測では16pF負荷で5ns@1MHz/10ns@100kHzでした。ただ、SimulationではTrを変えてもVdetはTrの変化に比べて緩やかです。ダイオード検波がピークと平均値の中間で動作しているせいかもしれません。

■Simulation
この基本回路で、V1を1MHz/5VとしC1を0.2pF~2pF変化させたときのVoutのSimulationです。
DVM AE-7136/3に合わせてVout=10mV/pFとなるようにR2を決めています。
Voutの変化は等間隔でリニアに変化しているようです。グラフにすると下記のようになります。
同じ条件でC1が2pF~20pFのときのSimulationです。Cが16pF以上でリニアリティが悪化しています。
V1を100kHzにすれば、C1が200pFまで同じ条件で計測できます。
やはり160pF以上でリニアリティが悪化していますが、150pF以上はDVMに任せることにします。

■回路図
LCD DVM AE-7136/3を使ったので、-5V用にTJ7660が必要になりました。
■PCB
秋月電子のユニバーサルC基板を使っています。
DUT端子(J2/J3)はテストピンを流用しています。いちいち半田付けするのは面倒です。

■実測
信用できるコンデンサで校正する必要があります。J(±5%)品しかないのでいくつか計測してエイやで決めました。
 
   

Receiver 3.4:Dual PLL Synchronous Direct Conversion FM Radio

2重PLL同期検波によるDirect Conversion FMラジオ-2 ■概要 Receiver 3.1で、Xtal発振を参照して自励発振のVCOを制御するの第1のPLLループと、そのXtalによるVCXOの発振周波数を制御する第2のPLLループを持つ2重PLL回路が、ループ...